UX:User Experience(ユーザーエクスペリエンス)

日本語で「ユーザー体験」と表されることの多いUXデザイン(以下、UX)。製品やサービスを通して、ユーザーが体験すること全てをデザインするのがUXです。そしてUXの目的は、

  • 顧客にリピーターになってもらう
  • リピーターにファンになってもらう

ということです。商品などのモノではなく、体験というコトをデザイン・設計するのが大きな特徴です。このため、ブランディングを行う上でもUXデザインが非常に重要かつ有効な手法となり、欠かせないものです。

英語のExperienceには

  • 経験
  • 体験

などの意味があります。ITやビジネスの場では経験や体験の他に、印象や認識といったことを指す場合もあります。

UIデザインとの違い

UXとよく一緒に説明されていることに「UIデザイン」があります。UIデザインは、ユーザーがwebサイトやアプリを快適に使うための設計/要素となりますが、UXは製品やサービスを通して、ユーザーが体験すること全てをデザインすることを指すため、UIデザインはUXデザインの一部となります。

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UXデザインのプロセス

UXを行うプロセスには様々な手法があります。主な手法として、

  • デザイン思考
  • リーンUX
  • ユーザー中心設計
  • 人間中心設計
  • …tec

があります。そして、それぞれのプロセスの根本的な部分には多くの共通点があります。今回はこれらのどの手法にも当てはまる基本的なプロセスを、順に追って説明していきます。

1. 戦略設計

このプロセスでは、「どのようなユーザーをターゲットに、どのような体験を届けるのか」を決めます。ここで決定する下記の方針が、UXデザインの要となります。

  • ターゲット層(以下、ユーザー)
  • ペルソナ
  • 体験してほしいこと
  • 体験後に感じて(行動して)ほしいこと

2. ニーズの調査

戦略で決定したユーザーのニーズをより深く知り、認識する必要があります。このニーズの調査では、収集した情報/データの分析だけでなく、データからは得られないユーザーの無意識な行為や価値観をリサーチ/調査します。求める情報によってはユーザーインタビューなどの調査手法も取り入れます。

ユーザーインタビューやSWOT分析、戦略時に設定したペルソナなどによって、ユーザーの価値観や潜在的ニーズを明確にしておく必要があります。また、製品・サービスの価値について正しく理解することもとても重要です。これらが出来なければ、その後のデザインのプロセスが誤った方向に進んでしまいます。

3. 要件の決定

戦略で定めた体験を実現するために、ユーザーに正確に情報を発信し伝わるために、必要な機能やコンテンツを決定します。コンテンツだけでなく、どのメディア(媒体)を使用して情報発信をするかも決めます。また忘れがちになってしまう、

“どのようにマネタイズするのか”

を考える事も重要です。決定した要件では、どのようなマネタイズが可能かを考えながら行うことを忘れないでください。ユーザー体験の要件定義のアウトプットとしては、カスタマージャーニーマップ、ストーリーボードなどがとても有効となります。

4. 骨組み

このプロセスでは、要件をより具体的にすることが肝心です。商品やサービスの設計をより細かく行い、これまでの情報や要項を骨組みしていきます。ここでは主に、

  • 素材の要素
  • 文章の構成
  • レイアウトの構成

を決めます。そしてこの段階から、インターフェースの使いやすさである「UI」が大きく関わります。サイトマップやワイヤフレーム、プロトタイピングを作成することが多くなる段階でもあります。さらにこの段階でも、クリエイティブや技術の面からだけでなく、ビジネス面から見ても破綻のないように構造化されているかを考えることが重要です。

5. プロトタイプの作成

プロトタイプの作成では、骨組みされた要件を適切に実現できるよう、機能やコンテンツ全体を構造化し、ユーザーのニーズを満たす最小限のプロダクトを決定します。そしてプロトタイプを作成します。プロセスとして、UIモデリングの作成をします。

6. デザイン作成

これまでの段階を踏まえ、商品やサービスの視覚的なデザイン作成を行います。

  • ロゴデザイン
  • 使用するフォント
  • 色彩

などを決定作成しますが、骨組みの段階で決定した「素材の要素、文章の構成、レイアウトの構成」も加味して、VI(ビジュアルアイデンティティ)を策定し、統一感のある体験を実現します。なおこのVIも含み、デザイン面で統一すべきことを「トンマナ」と言うこともあります。

7. 検証

作成したプロトタイプ/デザインを基にユーザー検証を行います。本当にユーザーの要求を満たしているか、行動をしてもらっているか、などが検証対象です。そして、本来の目的を達成できているかを確認します。この検証には、カスタマージャーニーマップを活用すると良いです。カスタマージャーニーマップとは、戦略設計時に設定したペルソナの行動や感情のモデルを時系列で表したものです。

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ビジネス面での重要性

様々なサービスやプロダクトや商品が溢れかえっているからこそ、ユーザーはサービスや商品を通して得られる『体験』を重視して選ぶようになっています。そのため、ユーザーの根本的なニーズを調査し課題を見つけだし、より優れた顧客体験が設計できるUXはビジネスの成長の成否を担っていると言えます。

プロジェクトメンバー間の連携強化

さらにUXは、複数のメンバーで行うプロジェクトに欠かせない『共通認識』を養うことができるようにもなります。Webサイト制作やサービス構築などのプロジェクトは、多くの人が関わって作りあげます。しかも、普段はWeb以外の仕事をしている人や、外部のパートナー会社からの参加者もいることは多々あります。そういった多種多様な人たちの間で起きがちな齟齬やすれ違いを避けるためにも、共通認識を生み出すUXは大きな役割を持っています。

まとめ

良質なUXデザインを行う上で大切なことは、「ユーザーに寄り添う」ということです。または「ユーザーをよく見る」ことです。ユーザーの動向やニーズを事細かに観察し理解することで、既存ビジネスの改善に役立てることができます。新規ビジネスの発案や設計にも大いに役立ちます。UXデザインと聞くと、Webやアプリケーションを思い浮かべる方が多いと思います。しかし実際は、商品やサービスの改善からリブランディングにも活用できることが、今回の記事で理解いただけたかと思います。これからの貴社のUXデザインに当記事がお役に立てれば幸いです。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございます。